ワーファリン、DOACと老健施設について

心房細動による脳梗塞の予防には昔はワーファリンというお薬の内服しかありませんでした。

この薬は安価で、ちゃんとコントロールさえできれば効果も申し分ないいい薬ですが、食事や併用薬に気をつけないといけなかったり、そもそも個人個人で調節が難しい時があるなど、難点も多い薬です。

 

そんな中、新薬としてDOACたちが次々と発売されて行きます。今では日本で認可されているものに、プラザキサ、イグザレルト、リクシアナ、エリキュースがあります。これらは大体が腎機能、年齢等で調整されますが、通常用量か低容量しかなく。お薬の相互作用や食事に気を使う必要がありません。しかも出血性合併症もワーファリンと比較すると有意に少なく、脳出血が多いアジア人には非常に恩恵のある薬たちです。

 

脳梗塞で入院され、心房細動が認められた患者にはこれらDOACを基本的には使うようにしていますが、高齢で退院後に老健施設に行かれる方はワーファリンを使用しています。

 

なぜか?

 

それは例えDOACを使用しても老健施設ではワーファリンに勝手に変えられるからです。

 

老健施設ではこまめに採血してワーファリンの調整はまずされませんので、結局効いていないもしくは効きすぎていたで、脳梗塞脳出血をきたし戻ってくる患者さんがいます。

なぜDOACではなくワーファリンになるかというと、老健施設では検査や、お薬等サービスに対して決められた額しか支払われません。つまりそこで新薬等高い薬を継続すると利益が減ってしまうわけです。

だから安いワーファリンに切り替えられるのです。そこでこまめに血液検査をして服薬調整できればいいのですが、これも同様にできないようです。

現場では(私だけ?)老健施設こそDOACを使用できた方が良いのにと憤っていますが、これが日本の現状です。

私たち急性期病院に出来ることは早くワーファリンを治療域に乗せて、安定させることです。

 

こういったことは当科だけでなく、きっと他科の先生方も歯がゆい思いをして日々診療に当たられていると思います。

 

これで良くなるとは思いませんが、皆さんにも少し知っていただきたく、ざっと書かせて頂きました。